学生にとってもビジネスパーソンにとっても、自身のキャリア設計がひとつの命題となっていると思います。
未だに自身の道を見付けられず、活路を見出せずにいる方々には、一読をお勧めする本があります。
![]() | ハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にて (2006/11/16) 岩瀬 大輔 商品詳細を見る |
本ブログにおいても幾度かにわたって勝手に紹介させて頂いている、ライフネット生命保険副代表 岩瀬大輔氏が書き上げた本書。
本書は、氏がハーバード・ビジネス・スクール(以下HBS)に在籍した頃リアルタイムで書き綴っていたブログをひとつの本に纏め上げたものです。
HBSの講義を疑似体験できるのはもちろん、岩瀬氏のエッジの利いた考え方、キャリアを垣間見ることが出来、下手な自己啓発本を読むよりインスパイアされる事間違いありません。
本エントリでは、主にはキャリア・ライフ設計といった視座から、僕自身が読んでいて感じた事を書き綴ろうと思います。
・ギリシアの漁師と投資銀行家
・計画された偶然性
・Transformational experience
ギリシアの漁師と投資銀行家
一生探求するであろう命題だと思われる議題があります。
それは、幸せとは何か?豊かさとは何か?
ファイナンシャル・プランナーがライフプランニングする際に柱とするのは健康、やりがい、お金の三つです。FPはこれらをバランスよく高水準に保つことを目標に、主にはお金の面を計画的にプランニングしていきます。
しかし、当たり前ではありますが幸せや豊かさはそんなに単純なものではありませんよね。
以下、有名な話ではありますが、自身がどう生きるべきかを考えさせられる話を紹介します。(本書においても引用されていました)
少し長いですが、初見の方は是非最後まで読んでみて下さい。
ギリシアのある小さな島に、1人の漁師がいた。
男はまだ暗いうちから起き出して、波打ち際を歩くのが好きだった。波しぶきの音を聞きながら、少しずつ明るくなる水平線を見渡すと、どこか自分という個の存在を超えた、自分が生まれるずっと前の雄大な歴史を感じることが出来るような気がするのだった。
男は毎朝、海に出て、仕事をした。子供の頃から海に出ていたから、船の上が自分の本当の家であるかのように感じていた。網を持って魚達と真剣勝負で向かい合うのが、何よりも好きだった。大量の日もぱっとしない日も、海はいつも、彼に多くのことを教えてくれた。
漁から戻るのは、いつも昼過ぎだった。彼は浜辺で仲間達とその日の収穫を焼いて食し、残りの魚を小さな市場でわずかなお金と引き換えに売り、そのままフルーツや野菜、必要なものを買って、丘の上の小さな家に帰るのだった。
家に帰ると、家族が彼を待っていた。やんちゃな子供達と外に出て遊び、食卓を囲んで彼らの1日の冒険話に耳を傾け、寝静まった後で、テラスに出て妻と酒を飲むのが日課だった。
ある日の午後、彼のもとを1人の若い男が訪れた。
この島には不釣合いのダークスーツを着たこの男は、アメリカのハーバード・ビジネススクールという学校を卒業したのち、名門投資銀行に勤めているとのことだった。
「漁師さん、あなたの腕の素晴らしさについては遠くウォール街でも名が轟いています。つきましては、ぜひともあなたと事業をともにしたいと思い、はるばるやって参りました。ひとつ、私の話を聞いていただけませんでしょうか?」
男はそういいながら、40ページはあるプレゼンテーション資料を取り出して机の上に置いた。
「我々の調査によると、あなたが取る魚の鮮度は素晴らしく、この小さな島で売っているだけでは、もったいない! 私達の国際的なネットワークを活かして、この島、そしてギリシアの国境を越えて、広く世界にあなたが取った魚を販売しようではありませんか!」
「そのためには、まず生産性を上げなくてはなりません。あなたのような漁業従事者の生産性について、国際的なベンチマークを調査したのがこのグラフです。すでに平均以上の高さにあるのですが、より多くの人を雇い、新たな漁船を買い入れることで、規模の経済を活かし、今よりもさらに数倍、生産性を高めることが可能になります!もちろん、資金は当行でご用意させていただきます。」
「拡大した業務の円滑な運営のためには、基幹システムへの投資も必要となりますね。他のプロジェクトでも一緒に仕事をした、優れたITコンサルタントを知っていますので、ご紹介します。また、あなたが家にいても常に漁の具合や日々の売上、利益動向がわかるように、モバイルのシステムも必要ですね」
「この戦略が軌道に乗ったら、競合他社を買収しましょう! 隣り島に、ちょうど同規模の業者がいます。彼らを取り込むことによって、間接部門を合理化し、新たな顧客も獲得し、もって収益率を高めていくことが可能です。もちろん、交渉から取引のクロージングまで、我々が一切サポートいたします」
「これで売上を大幅に伸ばし、成長していくことができたら、株式公開を目指しましょう! 資金調達の円滑さを求めるならば、地元ギリシアの株式市場などではなく、米国ナスダックで! わが国では、大きな成長ポテンシャルを持っている企業へ投資したい投資家が山ほどいます。これによって、あなたは想像したこともないほどの富を手にするでしょう!」
ここまで一方的に話をされたのち、漁師は一言言った。
「それで、そのあとに、私はどうすればいいのですか?」
「え?」
それまで雄弁だった男は、そこで止まってしまった。まるで、その問いに対する応えは準備していなかったかのように。
「えっと・・・。そうですね、それで富を手にしたのちは、引退されて大きな家でも買われたらいかがですか? 毎朝ジョギングでもして。ここでしたら波打ち際が気持ち良さそうですよね。それからご趣味に好きなだけ時間を使われて、優雅なブランチでもお仲間とご一緒にされて、ご家庭で好きなだけお子さん達と遊んで、夜はほら、奥様を素敵なディナーにでも連れて行く。そんな、夢のような毎日を送ることができるのですよ! もう、毎日仕事に追われる必要はなくなるのです」
「それだったら、今の私の生活と何も変わらないのですが・・・。
途中、がむしゃらに働いたのは、何の意味があったのですか?」
この話は話人によって微妙に設定が違ったりもするのですが、エリート集団であるHBS学生の中でも知らぬ人がいない程の有名な話です。
個人的にも非常に示唆のある話だと思います。
ワークライフ・バランスを如何に築くのか、人生を通して一体何がしたいのか、こういったアジェンダに対する本質をしっかりと考えなければいけません。
・・・
おっと、続きを書こうと思いましたが、大分エントリが長くなってしまいましたので、今回は前半・後半に分けることとします。
では、海の見える丘の上の家で、綺麗な妻と晩酌している夢を見れることを祈りながら、床に就くことにします。Zzz
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